操縦

双発機の操縦 上級篇 - エンジン故障への対処

The Air Combat Tutorial Libraryの動画を勝手に引用、紹介しながら飛行機と操縦の基礎を学ぶ独習シリーズ。

Principlesの14本め。マルチエンジンのレシプロ機を飛ばすときの上級編で、片方のエンジンが故障してコントロール不能になったときの回復と着陸方法について紹介されています。

前回の続きになっているので、まずそちらからお読みください。

初級篇
コンベンショナルツインエンジン
レシプロ双発機の操縦 基本篇

The Air Combat Tutorial Libraryの動画を勝手に引用、紹介しながら飛行機と操縦の基礎を学ぶ独 ...

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今回の内容、とくに後半の着陸については聴き取りと解釈の両方とも心許なくて、要約としての正確性に欠けるところがあるかと思いますが、ご自分で見ていただくときの叩き台な捉え方で呼んでいただけると幸いです

 

エンジン故障でも操縦できる最低速度=Vmc

エンジンが作動しない場合でもなんとか操縦可能な最低の速度をVmcという。
Vmcを下回わる速度で飛行すると、方向のコントロールができなくなる。

Vmcについて

Vmcを下回る速度ではコントロールを失う

エンジンが故障すると、正常な方のエンジンと出力の不均衡が起きるためにヨーが発生する。
この不均衡で発生したヨーをフルラダーを踏んでも止めることができない場合、方向のコントロールを失う。

コントロールの喪失

ヨーをラダーで制御できなくなる

 

Vmcとエンジン故障への対応について

Vmcとエンジン故障への対応について紹介する

 

Vmc以下の速度で低空を飛ぶのは命取り

低高度でVmcを下回ると、リカバーするのに充分な高度がないため致命的。

左エンジンが故障した場合、右エンジンの推力により左へのヨーが発生する。
特に低速で高推力を出すと故障エンジン側へのロールが非常に大きくなり、低高度の場合は回復ができない。

低高度でのVmcによる墜落01

Vmcを下回る速度で低空飛行

低高度でのVmcによる墜落02

ヨーからロールが発生

低高度でのVmcによる墜落03

回復できる高度がなく墜落

 

Vmcを下回ったときの挙動をデモフライトで解説

Vmcは条件によっていろいろ変化する。

Vmcのデモ01

Vmcは条件によって変化する

例として,クリティカルエンジン側の出力を落とし、もう一方の出力を上げることで最悪のシナリオでのエンジン故障をシミュレートする。

Vmcのデモ02

左右の出力差を使ってVmcの影響を再現

ゼロサイドスリップの状態で機首を上げて対気速度を落とす。

Vmcのデモ03

速度が落ちれば落ちるほど、方向を保つためにラダーを使わなければならない。

ラダーでの補正が効かなくなった速度がVmc。

Vmcのデモ04

速度が下がってVmcへ近づく

故障したエンジン側へヨーが発生し、コントロールを失う。

Vmcのデモ05

ヨーからロールが発生、コントロールを失う

Vmcのデモ06

コントロールを回復

 

エンジン故障をシミュレートする

クリティカルエンジンの出力を絞り、もう一方をマキシマムコンティニュアスパワーに上げて、機首を上げ対気速度を落とす。

エンジン故障を想定する

出力差を付けてエンジン故障をシミュレート

ゼロサイドスリップになるようにラダーを調節しつつ飛行。

ゼロサイドスリップを維持

ボールを「ゼロ サイドスリップ」に保つ

しかし、あるところまでくるとコントロールができなくなる。

このとき修正しなければならないのは、低すぎる速度と推力の不均衡。

速度については機首を下げることで回復、推力差は正常な方のエンジン出力を下げることで対応する。

正常作動しているエンジン側へ右ラダーをめいっぱい踏み切ってしまったところがVmcVmcになったところで、故障エンジン側へ機体が向かいはじめる。
対処法としては、正常なエンジンの出力をいったん落としておいてから機首を下げ、Vmcを越えてラダーが効く速度まで対気速度を回復する。

対気速度が充分に上がったら、正常なエンジンの出力を上げて、上昇速度を回復させる。

コントロールの回復

推力を落とし機首を下げて、速度をVmc以上に回復する

 

 

エンジン故障の影響

エンジンが故障すると性能とコントロールの両方を失う。
双発エンジンの片方が停止するとエンジン出力の50%が失われるが、その結果上昇性能の90%が失われることを意味している。

残ったエンジンは推力の不均衡を生み、方向のコントロールに悪影響を与えるので、パイロットは対抗策をとらなければならない。

エンジン故障の影響

片側のエンジンを失うと上昇性能は90%失われる

 

コントロールを維持する

方向のコントロールを失わないようにするには、
- ミニマムな最適上昇速度を維持する
- 生きているエンジン側に2~3°バンクさせ、さらにサイドスリップをゼロに保つ
- たとえ降下中であっても、これを行うこと

コントロールを保つ

コントロールを維持する方法3箇条

上昇速度について

動画内では"best rate of climb speed"と呼んでいるが、最適上昇速度のことかどうかよくわかりません。

 

ゼロサイドスリップ

エンジン故障時にボールをセンターに維持すると実はサイドスリップ状態になっているので、アンコーディネイテッドフライトになっている。

ラダーを使ってスプリット ザ ボールを保つことでゼロサイドスリップとなり、飛行性能と方向性のコントロールを最大限にキープする。

スプリット・ザ・ボール

ボールをずらすことでゼロサイドスリップを保つ

スプリット・ザ・ボール

スリップインディケーターのボールが、センターのゲージに半分かかっているところから、"スプリット ザ ボール"なのではないかと推測しています。

 

エンジン故障のときはマントラを唱えよ

エンジンが故障したときの呪文。

  1. まず第一に方向のコントロールを保つ
  2. 次にミクスチャーとプロペラとスロットルを最大に
  3. フラップとギアを上げる
  4. 死んだ脚=故障したエンジンを特定する
  5. 故障したエンジンをアイドルにすることで確認
  6. トラブルシュートを試みるか、フェザリングでドラッグを軽減する
  7. "Secure"
マントラ

エンジン故障時の7つの呪文

なんでデッドフットなのか推測してみた

4番の内容で、なぜ故障したエンジン側のことをデッドフットと呼ぶのか推測してみました。
故障した側にヨーが働くため、それを打ち消すには正常なエンジン側のラダーを踏む必要がでてきます。

つまり故障した側の脚は仕事をしないので"デッドフット"なのではないかと。

なにがSecure?

スクリーンショットによると7番は"Secure"とだけ書かれていますが、自動文字起こしの字幕を読むと"Secure the engine and if you need to you can drop to ordance to reduce drag further"と言っているようです。

残念ながら、この"Secure the engine"のニュアンスが私にはよく分かりません。

後半の方は、「可能なら武装を投棄して(重量を軽くし)ドラッグをさらに軽減しろ」ということのようです。

 

エンジン故障での着陸

片肺飛行で着陸する場合、基本は通常の着陸と同じ。ただし次の項目に気をつけること

  • フラップは1/2以上にしない
  • 通常よりアプローチ速度を僅かに速くする
  • 安定したアプローチを保ち、片肺でのゴーアラウンドはしないこと。
エンジン停止での着陸時の心得

片肺で着陸するときの心得

 

エンジン故障時の着陸デモ

一方のエンジンが故障し片肺での着陸を行う場合のデモを紹介する。

左エンジンの故障

左エンジン故障

故障が発生すると、エンジン回転数や油圧に変動が見られる。

エンジン故障時のマニフォールドプレッシャー

故障時にはマニフォールドプレッシャーは信頼しない

エンジンが故障したらディレクショナルコントロールを維持して、スロットル、プロペラをすべてフルポジションにする。

故障時の初期対応

故障したらまず対処する3項目

ギアとフラップがアップになっていることを確認。

ギアとフラップの収納

ギアとフラップが上がっているのを確認

どちらのエンジンが故障したかを確認する。

デッドフットを確認

デッドフットを確認する

左エンジンの故障を想定したシミュレーションとして、左エンジンのスロットルを閉じる。

スロットルを閉じる

故障した側のスロットルを閉じる

 

フェザリングのプロセスが進んでいる間、コックピットビューから外部ビューに切り替えてプロペラブレードを確認してみる。

最初のうちはプロペラプロペラブレードの表面が多く見えている(幅が太く感じられる)ていて、観察している間にプロペラの見た目がだんだん小さくなっていくようなら、相対的な風によってブレードの角度がわずかずつ修正されているため。

フェザリングのプロセス1

最初はブレードが太く見える

フェザリングのプロセス02

徐々にブレードが細く見える

フェザリングのプロセス03

抵抗が減ってパフォーマンスは改善される

これによってプロペラによる空気抵抗が減るため、フライトパフォーマンスは向上する。
飛行を続けたいならこれは非常に重要である。

コックピットビューに戻る。
”1"キーを押して左エンジンを選択し、"e"キーでエンジンをオフにする(IL-2 シュトルモビクの操作)。

エンジン停止

エンジンを停止する

オイルラジエーターと冷却水ラジエーターが完全に閉じたことを確認する。

これによって空気抵抗が最小となる。

ラジエーターを閉じる

ラジエーターをすべて閉じる

暑いときや湿度が高いときなど大気のコンディション次第では、すべて適切に処理していても高度の維持が難しい場合があるかもしれない。

気温や湿度の条件

外気の条件や機体重量が影響する

この動画のケースでは、空気抵抗と重さをさらに減らすために、武器(爆弾)を投棄する必要があった。

赤枠内に2発の爆弾を懸架しているところに注目。

重量物の投棄

爆弾などを投棄して重量を少しでも減らす

爆弾を投棄することで空気抵抗と重量が減る。

爆弾投棄後

爆弾を投棄したあと

 

続いて、片肺での着陸を成功させるために飛行場を発見することに集中する。

片肺での着陸プロセス01

故障エンジン側への旋回は好ましくない

故障しているエンジン側(ここでは左)に旋回するのは、Vmcが上がってしまうので望ましくない。

ディレクショナルコントロールに集中している間に対気速度は上がったことでより安全になってはいるが、できれば安全性を確保するため、正常なエンジンの方(ここでは右側)へ旋回した方が望ましい。

片肺での着陸プロセス02

対気速度が上がることで多少安全になる

 

飛行場が11時の方向に見えている。

片肺での着陸プロセス03

ダウンウィンドでランウェイを確認

プロペラはフェザリングの状態でエンジンはセキュア。着陸を試みるのにいい状況。

パワーセッティングを減らしているため、高度を維持しやすくなっている。これはこのときの大気の状態による。

高温で湿度が高いときは、高度を維持できなくなる可能性もあるので、エンジンパワーを必要以上に上げないように心がけている。

片肺での着陸プロセス04

状況によってはフラップ展開を遅らせる

このあたりでギアとフラップを下ろす。

着陸手順は基本的に通常通りでよいが、フラップは1/2までにしておく。

片肺での着陸プロセス05

フラップは最大でも1/2にとどめる

機体ごとの通常のアプローチ速度を覚えておき、それよりわずかに速いスピードで進入する。

片肺での着陸プロセス06

わずかに速いアプローチ速度で

片肺での着陸プロセス07

故障側へ旋回するときは特に役立つ

 

片肺での着陸プロセス08

フラップを大きく展開するのは、安全を確信できたときのみ

バンクを深くしすぎるとVmcはさらに大きくなるので注意。

片肺での着陸プロセス08

ファイナルターン

推力を下げることでVmcも下がる。

片肺での着陸プロセス09

推力が下がればVmcも下がる

ここではホイールランディングで着陸。

主脚が接地したらわずかに操縦桿を押してから、パワーをカット。

ブレーキをかけつつ、尾翼側が接地しないように姿勢を維持する。

片肺での着陸プロセス10

タッチダウン

減速して尾輪が接地したら、バックプレッシャーをフルに掛けながら完全に停止するまでフルブレーキング。

片肺でのタキシングは困難なので、左右の独立したブレーキングとフルラダー操作が必要。

片肺での着陸プロセス11

片肺でのタキシングは困難

 

 

特性を理解しておけば冷静に対処できる

約10分間の動画でしたが、今回はいつも以上に内容の把握に時間がかかりました。

とくに最後の着陸プロセスに入ってからは、うまく聴き取れないところが多く、さらに字幕をを呼んでも理解できないところがあるので、あまり信頼せず、ご自分で動画を見ていただくときの手助け程度にとどめてください。

それでもVmcの重要性についてはかなり理解できたと思います。

 

今回の動画のまとめ

  • 操縦不能になる最低限の速度をVmcという
  • 旋回などの運動をすることでVmcは上がる
  • 気象条件や機体重量によってもVmcは変化する
  • プロペラのフェザリングなどでできるだけ抵抗を減らす
  • 武装の投棄などで重量も軽減する
  • デッドフット側への旋回は極力避ける
  • 通常よりもやや速いスピードでアプローチ
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