The Air Combat Tutorial Libraryの動画を勝手に引用、紹介しながら飛行機と操縦の基礎を学ぶ独習シリーズ。
Principlesの13本め。マルチエンジンのレシプロ機を飛ばすときの基礎について。
いままでフライトシミュレーターでは双発と言えばジェットファイターしか経験がないし、実質単発機と同じように使っていたので知らないことばかりで、たいへん勉強になりました。
この記事の目次
マルチエンジン機の特性
マルチエンジン機への機種転換では以下の4点について理解する必要がある。
1. 旋回傾向(ターンテンデンシー)
2. クリティカルエンジン
3. Vmc
4. エンジン インオペラティブ プロシージャ
今回は1、2についての説明
旋回傾向
マルチエンジン機では、Pファクターとトルクが旋回傾向に影響する。
しかし、コンベンショナルツインかカウンターローテーティングツインかによってその影響は異なる。
コンベンショナルツインエンジン機の傾向
左右のプロペラの回転方向が同じもの。
旋回傾向はふたつのエンジンの力が合成されたものになる。
カウンターローテーティングツインエンジン機の傾向
左右のプロペラの回転が逆方向になるもの。
ふたつのエンジンによる旋回傾向が打ち消し合う。
故障時により重大な影響が出るクリティカルエンジン
エンジンが故障したときに、性能と操縦性に関してより大きな悪影響を及ぼす側のエンジンを、特にクリティカルエンジンという。
コンベンショナルツインエンジン機の場合
プロペラが時計周りの場合は左エンジン。プロペラが反時計回りに回っているエンジンでは右エンジンがクリティカルエンジンとなる。
カウンターローテーティングツインエンジン機の場合
クリティカルエンジンはなし。
クリティカルエンジンを決める4つの要素
次の4つの要素がクリティカルエンジンを決める。
- Pファクター
- アクセレーテッドスリップストリーム
- スパイラルスリップストリーム(プロペラ後流)
- トルク効果
コンベンショナルツインにおける4つの要素の影響
モーメントについての基礎知識
モーメントは推力×アーム(中心線からの距離)
機体の中心線からエンジンが遠いほどより大きなモーメントがかかる。
そのため、エンジンが故障した場合の悪影響も大きくなる。
左右のエンジンが止まったときの力について考える。
Pファクター
プロペラが下へ向かうほうがより大きな力となる。
エンジン単体で見たとき、プロペラが右回転(操縦席から見て時計周り)であれば右(ダウン)側の推力が大きい。
さらにふたつのエンジンで比べた場合、機体中心線から見ると右エンジンのダウン側と左エンジンのダウン側では右エンジンの方が遠いので、モーメントへの影響は右エンジンのほうが大きい。
すなわち右エンジンのほうが推力が大きい。
したがって、右エンジンが故障した場合右方向へのヨーの影響は小さいのに対し、左エンジンが故障した場合は左へのヨーが大きい。
このようにエンジンが故障した場合の悪影響は、性能、操縦性ともに左エンジンのほうがより大きいため、プロペラが時計周りのコンベンショナルツインでは左エンジンの方がクリティカルエンジンとなる。
アクセレーテッドスリップストリーム
主翼や尾翼に対する気流の影響について。
Pファクターは揚力の中心にも影響する。
右エンジンが故障した場合、右へのロールが起きるが相対的に小さめ。
左エンジンが故障した場合、左へのロールが相対的に大きく操縦に影響する。
そのため、アクセレーテッドスリップストリームでも、左がクリティカルエンジンとなる。
プロペラ後流(スパイラルスリップストリーム)
マルチエンジン機ではそれぞれのエンジンの後ろにプロペラ後流が起きる。
右エンジンが故障した場合、左エンジンの推力により右へのヨーを発生する。一方左エンジンのプロペラ後流が垂直安定板を押すことで左へのヨーが発生する。
このためふたつのヨーが打ち消し合う。
左エンジンが故障した場合、プロペラ後流による左へのヨーはないが、右エンジンの推力によるヨーが発生している。
よってこの場合も、左エンジンがクリティカル。
トルクエフェクト
双方のエンジンが正常に運転している場合、反トルクで機体は左へロールする。
どちらかのエンジンが故障すると、故障した側の揚力が減るため故障した側へ機体はロールしようとする。
右エンジンが故障した場合、機体は右へロールするので左エンジンの反トルクによるロールを抑える形になる。
左エンジンが故障した場合、反トルクによる左ロールと機体の左ロールが合成されて寄り大きなロールとなるため、操縦が難しくなる。
このため、左エンジンの方がクリティカルといえる。
双発機の特性をきちんと理解しよう
動画の冒頭であげた4つの要素のうち、旋回傾向(ターンテンデンシー)とクリティカルエンジンについての説明でした。
左右プロペラの回転方向が同じになるコンベンショナルツインエンジンでは、左エンジンが故障した場合、操縦への影響がより大きくなるのがよく理解できました。
タキシングのほうは単発機より簡単ということでしたが、空中では故障していなくてもデリケートな操縦が必要なようです。
- 双発機にはコンベンショナルツインとカウンターローテーティングツインの2タイプがある
- コンベンショナルツインは、プロペラの影響が複合して現れる
- カウンターローテーティングツインはプロペラの影響を打ち消し合う
- プロペラが時計周りの場合、左エンジンが故障するとより重大な影響が出る
後半はエンジン故障時の対処法について解説されています。
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上級編
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