今回もYouTubeチャンネルERAUSpecialVFRの動画から操縦の基本を学びます。
Four Fundamentals of Flightでは飛行の基本となる4つのマニューバー、すなわち直線水平飛行、上昇、下降、旋回について解説しています。航空機に働くリフト、ウェイト、スラスト、ドラッグの4つの力を実際にどのようにコントロールするかを解説しています。
すべてのマニューバーは、基礎であれ上級であれ、すべてこの4つのマニューバーの組み合わせなので、しっかり身につけておきましょう。
この記事の目次
直線水平飛行
水平線の確認を怠らない
一定の方向に、一定の高度を保って飛行することだが「手放し」でできるわけではない。
パイロットは、一定しない風によって起きる、高度や方角のデビエーション(偏差・ずれ)や無意識な上昇/下降、旋回に対して常に細かい修正を加えていかなければならない。
パイロットにとっていちばん重要なのは、常に外を見て水平線に注意を払うこと。それに対して計器は一瞬だけ見る程度となる。
FAAでは機体の外に対して90%の注意を払い、機内については10%にするように推奨している。
ピッチを確認する
機体のピッチを確認する場合は、水平線に対する機首の見え方を参考にする。
機体が上昇し始めているときは水平線より機首が上に見えるので、機首を下げる必要がある。
逆に機体が降下し始めていると機首が水平線より下がって見えるので、機首を上げる。
方角を維持する
方向を維持してまっすぐに飛ぶには、機体が横方向に対して水平になるようにすればいい。
それには機体の外をチェックして、主翼の翼端が水平線に対してどのように見えているかを確認する。
両方の翼端がどちらも水平線から同じ距離に見えれば水平。どちらか一方がもう一方よりも高く見えるなら、飛行機は旋回している。
ピッチは速度によって変わる
対気速度と迎角によって揚力をコントロールするが、直線水平飛行においてはおもにスロットルによって対気速度を調整し、エレベーターで高度を調整する。
水平飛行を維持するといっても、ピッチが常に同じというわけではない。対気速度が上がれば揚力が増加するという関係にあるため、対気速度が下がれば高度を維持するためにピッチをより大きくしなければならないからだ。
加減速とピッチの修正
通常の巡航飛行では一定の速度を保って飛行しているため、スラストとドラッグは釣り合っている。
パイロットがスロットルを操作してエンジン出力を上げると、プロペラの回転数が上昇し推力があがることで航空機は加速する。このときスラストがドラッグを上回っている。
航空機が加速したことでドラッグが増加し、最終的にはスラストとドラッグが釣り合って新たな速度で安定する(加速が終わり一定速度になる)。
対気速度が上昇したことで揚力が増加しているためピッチを下げる必要があり、もしピッチを下げない場合は機体が上昇しはじめる。
減速する場合、パイロットはまずスロットル開度を下げる。その結果、スラストが低下し、ドラッグがスラストを上回ることで対気速度が下がる。
対気速度が下がるのに対し高度を維持するために、パイロットは滑らかにピッチを上げる。
対気速度が下がったことでやがてドラッグは減少し、最終的にはスラストと釣り合って減速が終了する。
上昇
航空機を上昇させるため、パイロットはピッチを上げると同時にパワーを加えて、リフトがウェイトを上回るようにする。
機体が上昇に入るとフライトパスが水平から上昇姿勢に転じる。
ウェイトは当然真下(地球の中心)に向かって働くが、フライトパスに対しては直交していない。
これにより後ろ向きの力が働くためトータルドラッグが増加するので、バランスさせるためにより多くのスラストが必要となる。
上昇から水平飛行への復帰
上昇から水平飛行に戻るには、およそ上昇率の10%をめやすとしてレベルオフを開始する。
もし毎分500フィートで上昇している場合、希望した高度で水平飛行に入るためにはその50フィート手前からレベルオフを行う。
希望した高度で水平飛行に移ることができたら、上昇してきたときのエンジンパワーをしばらく保ち、巡航に移るために必要な加速を得る。
希望の巡航速度に達したら出力を下げる。
水平飛行に移ったのちも加速するようであれば、機体は上昇しようとしている。その場合、パイロットは機体が安定するまでピッチを下げて高度を維持する必要がある。
降下
リフトの量がウェイトを下回ると降下が発生する。
パイロットはピッチダウンで迎角を減らすか、エンジン出力を下げて対気速度を低下させることで降下を行う。どちらを使うかは状況によって異なる。
上昇時とは逆にウェイトのうち前方に向かう成分はスラストを増加させる。
降下から水平飛行への復帰
上昇時と同じように降下からのレベルオフも降下速度の10%をめやすとする。
旋回
旋回は、旋回したい方向に機体をバンクさせることで行う。
旋回は一見エルロンを使うだけに見えるが、実際にはもう少し複雑な操作を行う。
左旋回を例にとって解説する。
バンクはエルロンによって行う。右のエルロンが下がると、反対に左のエルロンが上がる。この動きによって右主翼のリフトが増加し、左主翼のリフトは減少するため、機体は左へロールする。
航空機が直線水平飛行しているとき、リフトの100%がウェイトとは逆方向の力として使われる。
しかし、いったんバンクするとリフトの方向はウェイトの反対方向ではなく機体に対しての上に向かって働く。
リフトの垂直成分は依然としてウェイトに対する反対の力として航空機を支えているが、そのほかに水平方向の力が発生しており、これが旋回を起こす力となる。
リフトの一部が旋回に使われると言うことは、ウェイトに対して機体を支えている力が減ることになるので、旋回を行うと高度が下がる。
したがって旋回で使用した分のリフトを鉛直方向に補うことでウェイトと釣り合いをとる必要がある。
高度を維持するためにリフトを増やすには、わずかにピッチアップする。
アドバースヨー
左旋回中の場合、右主翼のほうがより多くのリフトを発生しているが、それは同時に右主翼がより多くのドラッグを発生しているということでもある。
このドラッグによって機首は右へ引っ張られる。この動きをアドバースヨーという。
アドバースヨーを補正するには、旋回方向(左)のラダーペダルを踏む必要がある。
3舵の使い方
機首を正しい方向に向けるためには、1)エルロンを左へ切り、2)左のラダーを踏み、3)わずかに操縦桿を引いてエレベーターをアップする。
この3つのフライトコントロールを同時に操作する必要がある。
バンク角が異なると3つの舵に必要な操舵量も異なるが、これは訓練によって習得する必要がある。
ロールアウト
旋回から水平直進飛行に戻す操作(ロールバック)では、パイロットは狙った方位に達する前からロールアウト操作を行う。
主翼がバンクしている間は旋回を続けようとするので、ロールアウトの操作中も旋回は続いている。
一般的なルールとして、バンク角の半分をめやすにロールアウトを開始する。
たとえばバンク角30°で旋回している場合、狙った方位の15°手前でロールアウトを行う。
ロールアウトを行うことで、旋回に使っていたリフトが鉛直方向に働くようになるため、ウェイトに対してリフトの量が勝るようになる。さらに高度を維持するためにピッチアップしていた分も鉛直方向へのリフトとして働くようになるので、スムーズにバックプレッシャーを緩めてリフトの量を調節する。
基本となる4つのマニューバー - まとめ
水平直進飛行、上昇、降下、旋回の4つの基本的な操縦操作はすべてのマニューバーの基本となります。
紹介されたポイントをまとめてみました。
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水平直進飛行でも常に細かい修正が必要
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常に水平線の確認を怠らない
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ピッチ姿勢は速度によって変わる
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上昇や降下ではピッチとスラストを同時に調整する
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レベルオフは上昇/降下率の10%をめやすにする
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ロールアウトはバンク角の半分をめやすにする
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アドバースヨーをラダーで補正する
狙ったとおりの高度や方位へキレイにあわせるためには、レベルオフやロールアウトのタイミングと、リフトやスラストの調整についてしっかり身につける必要があります。