The Air Combat Tutorial Libraryの動画を勝手に引用、紹介しながら飛行機と操縦の基礎を学ぶ独習シリーズ。
Principlesの最後となる15本めでは、計器飛行の基本について紹介されています。航法ではなく、上昇/下降から目標高度で滑らかに水平飛行に移ったり、目標の進路できちんと旋回を終えるための計器の読み方について学びます。
動画では視界不良を特に強調していますが、通常の有視界飛行でもかなり重要です。
この記事の目次
視界不良時に欠かせない計器飛行技術
コックピット外と計器の両方を見ながらの飛行をComposite Flight(コンポジットフライト)という。
しかし、外の風景に基準となるものがなくて計器に頼るしかない状態をInstrument Flight(インスゥルメントフライト)といい、雲の中を飛ぶ場合や夜間に洋上を飛ぶ場合など視界が悪いときに必要となる。
コントロールとパフォーマンス
インストゥルメントフライトではコントロール&パフォーマンスと呼ばれる方法を用いる。
コントロール&パフォーマンスには、飛行に必要なパフォーマンスを生むためのピッチ&パワー制御を含む。
計器の種類
計器はその使い方によって大きく3つに分類される。
- コントロールインストゥルメント
- パフォーマンスインストゥルメント
- ナビゲーションインストゥルメント
コントロールインストゥルメント
- 姿勢指示器/人工水平儀(Attitude Indicator)
- パワーインディケーター
** タコメーター
**マニフォールドプレッシャー
** ブースト
パフォーマンスインストゥルメント
- 速度計
- 高度計
- 昇降計
- 飛行方位計
- ターンコーディネーター
これらはさらにプライマリとサポーティングに分類される。
プライマリとサポーティング
プライマリ - 頻繁にチェックすべき計器
サポーティング - プライマリ計器に問題がない場合にときどきチェックすべき計器
プライマリ計器のチェックを怠った場合に、操縦に制約が生じる。それについては、このレッスンの最後で紹介する。
ナビゲーションインストゥルメント
航法に関係して自機の位置を確認するために使用する計器。
- ILS
- ADF
- NDB
- VOR
スピットファイアのコックピットで計器の分類を学ぶ
スーパーマリンスピットファイアのコックピットを例に、計器の配置を紹介する。
パープルで表したのがコントロール計器。
イエローで表したのがパフォーマンス計器。
正しく飛行するためには、これらの計器のチェック方法を理解する必要がある。
バンクとピッチを同時に確認できる姿勢指示器(人工水平儀)をもっとも重視して、これを中心に他の機器を確認したら姿勢指示器へ戻るという手順を繰り返していく。
この手順をレギュラースキャンといい、これで高度、方位、速度、姿勢をつねに確認する。
計器確認でやりがちなミス
インストゥルメントフライトでの計器確認でやりがちなミスを列記する。
- 計器をチェックしない
- 計器を注視しすぎる
- 特定の計器のみに頼りすぎる
このようなミスを犯さないようにレギュラースキャンに戻り、コントロールを回復する。
ベーシックなマニューバ
飛行における4つの基本的なマニューバについてそれぞれにインストゥルメントフライトの要点を解説する。
- 一定した速度での上昇/下降
- 直線水平飛行
- 水平旋回
- 一定の上昇率/降下率を保つ
さら、旋回と上昇/下降の組み合わせを練習する。
ETSA
コントロールとパフォーマンスに必要なメソッドは頭文字をとってETSAと呼ばれる。
E - Establish Pitch and Power for the maneuver
必要なピッチ姿勢とパワーに調整する
T - Trim Airplane as needed
必要に応じてトリムを調整する
S - Scan Performance instruments
パフォーマンス関連の計器をチェックする
A - Adjust Control instruments as needed
コントロール関連の計器を見て修正する
デモフライトでの確認
まず、一定速での上昇から水平飛行に移るプロセスを紹介する。
一定速での上昇
ピッチに関するプライマリ計器 - 対気速度計(ASI=Air Speed Indicator)
ピッチに関するサポーティング計器 - 人工水平儀(AI=Atitude Indicator)
バンクに関するプライマリ計器 - 定針儀(DG=Directional Gyro)
バンクに関するサポーティング計器 - 旋回釣合計(TC=Turn Cordinator)
適切なピッチを維持するために速度を確認。バンクや旋回していないかを定針儀でチェック。
ピッチ姿勢が安定したら、パワーを確立するためにタコメーターで出力を確認する。
ピッチが安定したらレギュラースキャンを開始して、常に計器を確認する。
この動画では速度260マイル/時を維持するためにややピッチアップして、北へ向かって上昇を続ける。
3000フィートでレベルオフして水平飛行に移る。
レベルオフ
高度計と昇降計を確認しながら水平飛行に移る。
目的の高度に近づいたら昇降計の10%をめやすにレベルオフを開始。
毎分1500フィートで上昇中であれば、150フィート手前でレベルオフ。
タコメーターをチェックし、水平になったところでパワーを少し下げることでスムーズに水平飛行に移れる。
水平飛行に移ったら、プライマリとサーポーティング計器を水平飛行用に切り替える。
直線水平飛行
ピッチに関するプライマリ計器 - 高度計(ALT=Altitude Meter)
ピッチに関するサポーティング計器 - 昇降計(VSI=Vertical Speed Indicator)
バンクに関するプライマリ計器 - 定針儀(DG=Directional Gyro)
バンクに関するサポーティング計器 - 旋回釣合計(TC=Turn Cordinator)
飛行中に高度や方向が変化していたらピッチとバンクに微調整を加えて本来の状態に戻す。
水平旋回
ピッチに関するプライマリ計器 - 高度計(ALT=Altitude Meter)
ピッチに関するサポーティング計器 - 昇降計(VSI=Vertical Speed Indicator)
バンクに関するプライマリ計器 - 旋回釣合計(TC=Turn Cordinator)
バンクに関するサポーティング計器 - 人工水平儀(AI=Atitude Indicator)
旋回釣合計ではどのくらいの速さで旋回しているかがわかる。
ジャイロスコープのスローイングオフを防ぐためにバンクは最大30°にとどめる。
機体をバンクさせたことにより揚力が低下するので、高度を維持するために操縦桿にバックプレッシャーをかける。
高度計と旋回釣合計をチェックしつつ、ピッチとバンクを調整するために人工水平儀にも注意を払う。
ローリングアウト
水平旋回を終えて直線水平飛行に戻るときは、バンク角の1/2をめやすとして、目標方位の手前でローリングアウトに入る。
たとえば30°バンクで旋回中に方位270に向かいたいときは、方位285または方位255からローリングアウトする。
高度計に注意を払い直線水平飛行に戻る。
旋回上昇と旋回下降
ピッチに関するプライマリ計器 - 速度計と昇降計(ASI/VSI)
ピッチに関するサポーティング計器 - 人工水平儀(AI=Atitude Indicator)
バンクに関するプライマリ計器 - 旋回釣合計(TC=Turn Cordinator)
バンクに関するサポーティング計器 - 人工水平儀(AI=Atitude Indicator)
ピッチ、バンク、ヘディングを確認。
水平旋回を維持しつつ、人工水平儀を確認しながらパワーを上げて旋回上昇に入る。
旋回上昇ではチェックしなければならない作業が増えるので、少し速めに確認と調整を行う。
旋回上昇の終了に備えてパワーを少し下げて上昇率を落とす。
バンクを戻し、直線水平飛行に移って高度と方位を確認する。
上昇/下降率を一定に保った上昇と下降
ピッチに関するプライマリ計器 - 昇降計(VSI)
ピッチに関するサポーティング計器 - 人工水平儀(AI=Atitude Indicator)
バンクに関するプライマリ計器 - 定針儀(DG=Directional Gyro)
バンクに関するサポーティング計器 - 人工水平儀(AI=Atitude Indicator)
昇降計に注意して一定の上昇率/降下率を維持する。
プライマリバンクは定針儀に注意。
エンジン出力を落とし、人工水平儀に注意しつつ機首を下げて降下する。
ここでは毎分2000mmを維持。バンクしないよう注意しつつ西(方位270)へ向かう。
計器を素早くチェックしつつ降下。プライマリの意識は常に昇降計に向けること。
状況に応じて計器を読む
以上、視界が効かない雲の中や、地表の目標が見えない条件で計器をたよりに飛行するための技術でした。
こういうのは実際のフライトスクールでは当然学ぶでしょうが、コンバット系シミュレータのチュートリアルに出てくるとは意外でした。
人工水平儀をメインにしてその他の計器を細かくチェックしていくという程度には知っていましたが、状況に応じて計器の重要度が変わってくるというのは知らなかったのでたいへん参考になりました。
また、計器飛行というと個人的にはTACANやVORばかりをイメージしていましたが、それ以前にちゃんとしたメソッドがあるということが分かったのも収穫です。
- いろいろな計器をこまめにチェックする
- 特定の計器に注目しすぎない
- レギュラーチェックが大事
- 状況に応じて最重要計器が変わる
これで、AirCombat Tutorial LibraryのPrinciple篇は終了です。
マルチエンジン機の解説や今回の計器飛行は聴き取って理解するのがたいへんで、ブログに起こすのにもかなり時間がかかってしまいましたが、やってみてよかったと思います。
たぶんすぐ忘れるでしょうが、そのたびに読み直す手がかりになると思います。
また、次に動画を見るときにはさらに理解が深くなって、間違いを見つけるかもしれませんので、そんなことがあったらそのつど修正していきたいと思います。