ERAUSpecialVFRで公開されている動画から、フライトの原理に関する解説を紹介します。
まずは基本となる揚力・重力・推力・抗力の4つについての基本から。
飛行している航空機に働く4つの基本的な力について紹介。
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リフト
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ウエイト
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スラスト
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ドラッグ
リフト
リフト(揚力)は空気が主翼の周りを流れることで作り出す上向きの力で、飛行機を空中で支える。
ウェイト
重力により、地球の中心に向かって働く下向きの力で、リフトとは反対。
スラスト
スラスト(推力)は飛行機を前方に押す力。一般的には飛行機のプロペラやタービンエンジンによって作り出され、プロペラの場合は飛行機を引っ張り、タービンエンジンの場合は飛行機を推す。
ドラッグ
スラスト(推力)と反対方向に働く力で、飛行機の性能の上限はドラッグに影響される。
水平・直進・一定速での飛行
飛行機が飛行の方向、高度、対気速度の3つをすべて維持して安定した状態で飛んでいるとき、ストレート(直進)、レベル(水平)、一定速(アンアクセラレーテッド)である。
このとき、リフトとウェイトの値が等しく、スラストとドラッグの値が等しく、釣り合っている。
リフトを詳しく理解する
エアロフォイル(翼型)
続いて翼の構造を元にリフトを解説。
主翼はエアロフォイル(翼型)によってリフトを発生する。
物体の表面を流体(飛行機の場合は空気)が移動するとき、空気力学的な力が発生する。流体は液体とイコールではなく、ガスやプラズマなどもすべて流体であると見なされる。
翼についている操縦装置(エルロン、ラダー、エレベーター)やプロペラも、エアロフォイルとなっている。
また、飛行機の胴体そのものもエアロフォイルである。ただし、胴体はリフトを生み出すための翼型としては好ましい形ではない。
翼に関する用語
エアロフォイルの中でもいちばん最初に空気に触れる先端部分をリーディングエッジといい、逆に後端部分をトレーリングエッジという。
リーディングエッジとトレーリングエッジを結ぶ仮想の線をコードライン(翼弦)という。
飛行機が空気の中を移動するときに通過する経路をフライトパスという。
それに対し飛行機の周りを流れる空気の方向をリラティブウインド(相対風)という。
リラティブウインドはフライトパスに対して平行で、かつ逆向きとなる。
迎角(むかえかく)Angle of Attack
フライトパスに対するコードラインの角度を迎角(Angle of Attack)という。
迎角は翼が発生する揚力に大きく影響する。
ニュートンの運動の法則
続いてニュートンの運動の法則を紹介し、特に作用・反作用の法則と揚力の発生について説明。
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慣性の法則
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運動の法則
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作用・反作用の法則
通常の非行では、翼の周囲の空気が下向きの流れを造り、それが主翼を持ち上げるリフトを産む。
ベルヌーイの定理
流体の速度が増加すると圧力が低下する。
ヴェンチュリ管を使って、流速と内部圧力の関係を説明。
さらにヴェンチュリ管の絞り込んだ形を想定し、その部分がエアロフォイルに近いことを示す。
エアロフォイルに近いヴェンチュリ管の内部でも流速が上がると同時に圧力がさがり、揚力と同様の力が発生しているという説明。
エアロフォイルの場合、上側はヴェンチュリに近い形状のため流速アップ・圧力低下が発生するのに対し下側は平面に近いため、流速・圧力の変化はないため、相対的に翼の下側が高圧、上側が低圧となる。
翼はこのようなプレッシャーグラディエント(圧力勾配)を発生させる。この、上面と下面の圧力の不均衡がリフト(揚力)を発生させる。
Lift Equation
揚力=1/2×空気密度(ρ)×翼面積(S)×速度(v)の自乗×揚力係数(CL)
揚力係数は迎角に寄って変化する。
パイロットは一般的に対気速度と迎角によって揚力の大きさを制御する。
飛行速度が速いほど、また迎角が大きいほど大きな揚力を発生する。
しかし、迎角には上限がある。
迎角と揚力係数の関係
迎角が大きくなるにつれて揚力係数も大きくなるが、クリティカルアングルオブアタック(失速迎角)を越えると逆に揚力係数は低下する。つまり揚力自体は発生しているが、その量は減少していく。
この領域がストール(失速)。
翼の形状と揚力の関係
対気速度と迎角以外にも、揚力の大きさに影響する要素がある。
それが翼の形状であり、これはパイロットが操作できない。
翼の形状には4つの要素がある。
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プランフォーム(翼平面形)
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キャンバー
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アスペクトレシオ
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翼面積
プランフォーム(翼平面形)
機体上面から見た翼の平面形。
キャンバー
翼の曲率。コードラインを基準にした対称性が考慮され、揚力係数が最大になるように、そしてストール速度が最小になるように設計される。
アスペクトレシオ
翼の長さ(横方向)と幅(前後方向)の比率。アスペクトレシオが大きい(横幅が長い)翼ほど、大きな揚力を発生する。
たとえばグライダーはセスナ172に比べると翼が長く、大きなアスペクトレシオを持っている。
翼面積
翼の表面積が大きいほど、大きな揚力を発生する。
高揚力装置
一般的な航空機は、速度と迎角以外に揚力を調節する装置を備えている。
高揚力装置でもっとも一般的なのは、トレーリングエッジに設置されているフラップである。
フラップは低速での飛行中、特にアプローチから着陸において揚力とドラッグが増加するように翼の形を変化させる。
着陸中にフラップを使うことで、パイロットは機体の速度を上げずに急角度での降下が可能になり、より低速での接地を可能にする。
フラップは一般的には、段階的に少しずつ下げていくことで、角度を細かく調節する。
フラップを少し展開することでリフトはかなり増加するのに対し、ドラッグはわずかしか増加しない。
フラップを半分以上展開するとリフトの増加量は少なくなるが、ドラッグは大幅に大きくなる。
揚力以外の力
ウエイト
重力により飛行機を地球の中心に向かって引っ張る力。ウエイトは航空機の姿勢にかかわらず、重心(Center of Gravity)に対して働く。
航空機の重心は、搭乗する人数や貨物の数、燃料の搭載量などによって常に変化する。
飛行の間、エンジンパワーを生み出すために燃料を消費していくので、ウエイトそのものもだんだんと減少していく。
スラスト
スラスト(推力)は前向きに航空機を推す力で、ドラッグとは反対方向に働く。
ジェネラルエイビエイション用航空機の多くは、プロペラによって推力を発生する。
より大型のジェット機ではタービンエンジンによってスラストを発生させる。
スラストもリフトと同じ原理によって発生するが、力の方向が水平になる。
プロペラもエアロフォイルの一種であり、ブレードが回転することで周囲の空気を機体の後方へと加速させる。
そしてニュートンの作用・反作用の法則により、反対方向(前方)に飛行機を押し出す。
ドラッグ
パラサイトドラッグ(有害抗力)
航空機が大気中を飛行することによって直接的に生じる抗力で、次の3つに分けられる。
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Form Drag
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Interference Drag
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Skin Friction Drag
パラサイトドラッグは航空機の速度によって変化する。
航空機の速度が増すとパラサイトドラッグは、速度の自乗に比例して増加する。
120ノットで飛行中の機体は60ノットで飛行中のときより、4倍のパラサイトドラッグを発生している(同高度の場合)。
インデュースドドラッグ(誘導抗力)
リフト-インデュースドドラッグとも言われる。
主翼が揚力を発生しているとき、主翼より後ろでは下向きの空気の流れ(ダウンウォッシュ)が発生している。
また翼端では、ヴォーテックス(渦)が発生する。ヴォーテックスは主翼の下側から上側へ螺旋状に流れている。
ヴォーテックスは主翼翼面上を流れる空気の角度を変えることで、揚力の方向を(鉛直上ではなく)やや後ろ向きに傾ける。
これがインデュースドドラッグの原因になる。
インデュースドドラッグは、低速飛行時に大きく、高速では小さくなる。また、インデュースドドラッグは迎角が大きいほど増加する。
パイロットがインデュースドドラッグの低下を体感するのがグラウンドエフェクトで、翼面上を流れる空気が変化してリフトの方向を前方に変化させるためインデュースドドラッグは低下する。
パイロットはソフトフィールドでの離陸においてグラウンドエフェクトのアドバンテージを利用できる。
ソフトフィールドでの離陸では、通常のリフトオフ速度よりも手前でリフトオフが可能になる。
しかし、上昇を開始する前にスピードが上がるまで数秒間待たなければならない。
トータルドラッグ
パラサイトドラッグとインデュースドドラッグをグラフにプロットすると、ふたつを合成したトータルドラッグという新しいカーブが得られる。
トータルドラッグが最低となるポイントは、リフトが最大かつドラッグが最小となる速度を表している。
ベストグライドスピード
この速度をL/D MAXといい、別名ベストグライドスピード(Best Glide Speed)ともいわれる。
パイロットは、突然のエンジン不調が発生したとき滑空で地上に戻るために、この数字をしっかり把握しておかなければならない。
無風コンディションではベストグライドスピードがベストグライドレシオとなり、緊急着陸時にインテンデッドフィールドまでたどり着くためにもっとも長く空中にとどまることを可能にする。
トータルドラッグカーブのグラフの左側は、低速になるほどドラッグが増加する。この領域はバックサイド オブ パワーカーブ(Backside of Power Curve)と呼ばれる。
特に低空、低速、高迎角での飛行中はより多くの推力が必要で、ときにはフルパワーを出さなければならないこともある。
一方低速では翼面を流れる気流が少ないので、操縦操作に対する反応が遅くなる。そのため操縦に手応えがなく、実際に機体からの反応が返ってくる前に、操作量をより大きくしなければならないかもしれない。
4つのちからのまとめ
以上、揚力、重力、推力、抗力の4つの力についての基本的な原理の解説でした。
特に誘導抗力がどのように発生しているかや、ベストグライドスピードについてはよく知らなかったのでたいへん勉強になりました。
むかし本で読んだ知識で、基本的な用語はある程度知っているつもりですが、原理をきちんと理解するところまではいっていなかったのがわかります。
英語の説明を丹念に追って繰り返し見ることになるので、さらに理解が深くなっていくようです。