The Air Combat Tutorial Libraryの動画を勝手に引用、紹介しながら飛行機と操縦の基礎を学ぶ独習シリーズ。
CEM(Complex Engine Management)第5回は定速プロペラの働きと操作の解説です。
定速プロペラという名前から、ほっといても完全自動調整してくれるお気楽なものを想像していましたが、実際はそれなりの知識を必要とするようです。
定速プロペラがどのような仕組みなのかというところは触れず、基本的な働きと操縦に関する重要な注意事項の説明になっているので、その点は注意してください。
この記事の目次
定速プロペラとは
定速プロペラの特徴は、エンジン回転数が常に一定になるように、プロペラピッチを自動的に調節すること。
このピッチ調整機構は油圧によって動作し、ガバナーという部品によって制御される。
プロペラピッチの変化によってどのような効果があるかについては、可変ピッチプロペラの動画を参照のこと。
-
可変ピッチプロペラの働きと操作を学ぶ
The Air Combat Tutorial Libraryの動画を勝手に引用、紹介しながら飛行機と操縦の基礎を学ぶ独 ...
続きを見る
定速プロペラの制御方法
定速プロペラを搭載した機体では、エンジン出力を調整する方法として2つの操作がある。
-
回転数コントロールレバーによる回転数の調整
-
スロットルによるマニホールドプレッシャー(吸気圧)の調整
調整するのは回転数とマニホールドプレッシャーのふたつであり、プロペラピッチを直接操作するわけではない。
定速プロペラでのデモフライト
定速プロペラの動作は3つに分類される。
-
オンスピード
-
アンダースピード
-
オーバースピード
オンスピード
飛行機が降下に入ると対気速度が増し、同時にプロペラの回転数も上昇する。
しかし、ガバナーが働いて自動的にピッチをコース側に調整するため、回転数の上昇が抑えられる。
逆に上昇する場合は対気速度が下がりプロペラの回転数も低下するので、ガバナーの働きでピッチファイン側に調整することで回転数が下がり過ぎるのを防ぐ。
ガバナーによるピッチの制御範囲は、プロペラピッチの可動範囲によって制限される。
このようにプロペラピッチの上限と下限の間で制御可能な速度域のことをオンスピードという。
アンダースピード
回転数の低下に対応してプロペラピッチを小さくしていった結果、可動範囲の下限にまで達したばあい、もうそれ以上ピッチを小さくすることができない。この状態がアンダースピード
対気速度が低い状態でスロットルをアイドルに絞りさらにピッチアップ姿勢にすると、さらに対気速度が低下しそれに応じてエンジン回転数も下降する。
この場合、定速プロペラのガバナーは、プロペラピッチを小さくすることで回転数を上げようと働く。しかしピッチの下限に達してそれ以上ピッチを小さくできなるともはやガバナーでは制御できないので、固定ピッチプロペラと変わりなくなってしまう。この状態がアンダースピード。
アンダースピードに陥った場合は、降下するかスロットルを開くことでオンスピードの状態に戻すことができる。
オーバースピード
逆にスピードが速すぎてピッチをそれ以上大きくできない状態がオーバースピード。
動画では、ピッチが大きな状態にするために意図的にエンジン回転数を落としてからデモを行っている。
ピッチが大きな状態から降下にはいると、対気速度が上昇。最初はガバナー(によるピッチの調整)のおかげでエンジン回転数が安定した状態に保たれているが、ピッチが上限に達してしまうとその後はエンジン回転数が上昇していく。
水平飛行に戻ると定速プロペラのガバナーがエンジン回転を制御しているのがわかる。
エンジン出力の調整
出力を下げるときの手順
エンジン出力を下げるプロセスは次の3つ
-
マニホールドプレッシャーを下げる
-
エンジン回転数を下げる
-
ミクスチャーをリーンにする
出力を上げるときの手順
エンジン出力を上げるプロセスは次の3つ
-
ミクスチャーをリッチにする
-
エンジン回転数を上げる
-
マニホールドプレッシャーを上げる
出力調整のコツ
出力を調整するときはこれらの変更をスムーズに行い、プロペラの回転がオーバースピードにならないようにする。
エンジン回転数の調整は、ガバナーによるピッチの修正が可能なように、急激すぎたり逆にゆっくり過ぎたりしないように心がける。
オーバーブーストに注意
エンジン回転数が低い状態でマニホールドプレッシャーを高くすると、エンジンに損傷を与える。
定速プロペラ - まとめ
定速プロペラに関する説明をWebなどで探してみるとだいたいは制御機構について触れているだけです。
プロペラピッチを調整する必要がないということから、とても簡単で手軽な機構だと思い込んでいましたが、この動画を見ると、ピッチの調整幅に応じてオーバースピードやアンダースピードという限界領域があり、それに応じた操作が必要なことがわかりました。
メカニズムの勉強という単なる座学でなく、ゲームの中とはいえ実用的な使い方がわかる、貴重で有益な内容だと思います。
また、出力の調整も単にスロットルの開閉だけでなく、ミクスチャーの調整まで必要だというのも初めて知りました。
実機の操縦装置で、スロットル、ミクスチャー、ピッチの3つがなぜ1ヶ所にまとめられているのかもよくわかります。
-
-
定速プロペラではピッチの調整はしない
-
回転数とマニホールドプレッシャーの関係でピッチを自動的に調整する
-
ピッチの上限/下限に注意する
-
出力の調整は3つの操作を滑らかに
-
オーバーブーストに注意
-